聖 句
イエスは一人の子供を呼び寄せ、彼らの中に立たせて、言われた。「はっきり言っておく。心を入れ替えて子供のようにならなければ決して天の国に入ることはできない。」(マタイによる福音書18章2節~3節)
モンテッソーリ教育法の三つの要素
唐津カトリック幼稚園 園長 江夏 國彦
幼児教育に限らず教育のためには次の三つの要素が重要です。「場所」、「道具」、「指導者」の三つです。モンテッソーリ教育法においても「環境」、「教具」、「教員」の三つの要素が重要とされています。しかしモンテッソーリ教育法におけるこの各要素の考え方、捉え方は、普通の学校教育における場合と根本的に違いがあります。
イタリアのマリア・モンテッソーリ医学博士は、幼児期における人間の発達の仕方を医学的、児童心理学的な研究に基づいて見直した結果、いままでの幼児教育の仕方と違う教育方法を編み出したのです。
第一の要素の「場所」は普通の学校教育の場合「学校」です。それに対してモンテッソーリ教育法では「環境」です。「環境」の意味は、場所的なことではなく、子どもが自ら教具を選べる環境、興味を持つような教具をそろえてある環境、いろいろなクラス編成ができて、かつ社会性や協調性が促される環境、そして子供一人ひとりの発達段階に応じた環境をいいます。
第二の要素である「道具」は、普通の学校教育の場合、教科書やパソコンやその他多くがありますが、モンテッソーリ教育法では「教具」です。どの教具もそれぞれ意図をもって造くられており、子供は見たり、聞いたりだけではなく、いろいろな教具を実際に触わったり、切ったり、貼ったり、組み立てたりして、身体全体を使って学び興味を追求する活動のための道具です。
第三の要素である「指導者」は普通の学校教育では「教師」であり、教え導くことに焦点を当てられます。モンテッソーリ教育では「教員」です。その役割は学校教育での一般的な教師とは異なります。モンテッソーリ教育の教員は、子どもの成長を「見守る」ことに焦点をあてます。教え導くことよりも、選択肢を与えて自ら選び、学び、成長する過程を支えるのです。あくまでも子供の自主性を尊重し、見守りながら子供たちに何が必要かを注意深く観察し、必要と思われるときのみ適切な指導をします。ですから、教員も絶えず、研修会や日々の現場で学ぶ必要があるのです。国際モンテッソーリ協会や日本モンテッソーリ協会という組織団体があり、この教育法の教員資格も確立されています。
この教育法が考案されて100年以上たちます。今では世界の各地で採用されて、この教育法で育った有名人や国際的に活躍している人が多く輩出しています。幼児教育にとって、この教育方法の最も優れている点は、子供が自分の興味や発達段階に応じて、自由に活動を選ぶことが重視されていることだと私は思っています。選べるようになることは、子供の自主性や自信を育てるとともに、学習意欲や集中力を高める効果があります。そのことはさらに、創造性や協調性、社会性へと広がってゆくのではないかと思っています。さらに大人になってからは自主性、積極性だけでなく、自分で選んでしたことに自分で責任を取れる人間になることが期待されます。